2021年8月3日火曜日

夏休み特別企画 朝野園長コラム①

 7月20日~8月31日までは毎週火曜日にブログを更新します。

 

朝野園長先生は本学の芸術・スポーツ科学系美術分野の先生で、彫刻を専門とされています。

 

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「触覚による造形の発見」

 

私の彫刻作品づくりは形への憧れから始まり、

曲線や曲面に興味をもっています。

そして、形に触れて気持ちのいい造形を目指しています。

削っては触り、また削っては触りを繰り返しながら制作を進めていくことで

形への思いを深めていくように自分の中で感じています。

 

私がそのような触覚による造形に気付いたのは、

1986年から1992年までのイタリア留学中の頃でした。

当時、トスカーナ州の北に位置する

古代からの大理石産地として知られるカッラーラ市の

イタリア国立美術学院(Accademia di belle Arte di Carrara)で学んでいました。

その傍ら、地元の彫刻工房で大理石での彫刻制作を始めました。

 

しばらくして、美術学院の教授も務められた

彫刻家カルロ・セルジオ・シニョーリ(Carlo Sergio Signori)さんの

手伝いをすることになり、

彼の数々の素晴らしい作品を目の当たりにしたときから

彫刻の形への感情が変わりました。

シニョーリさんの大理石作品の欠けた部分の修復作業などをする中で、

彼の作品を直に手で触わる度に、

その手触りの良さに強烈な印象を受けました。

それは官能さえ覚えるような触り心地でした。

そのあとに自分の作った彫刻作品を触ってみると幻滅感に陥り、

今まで何をやってきたのかという自分の仕事に対する絶望を感じました。

その時以降、形に対する考え方が変わりました。

当時のシニョーリさんは80歳を過ぎていましたが、

私が修復作業をした部分を何度も触って確かめ、

形への妥協を許さない鋭い姿勢を感じました。

そのことが、私の彫刻制作姿勢に大きな影響を与えてくれました。

彫刻の形は視覚だけではなく、

触覚による造形と鑑賞であることに気付きました。

その当時に私が制作した彫刻画像をいくつか添えます。

 

1987年~1992年ごろの作品例


 La Donna (ラ・ドンナ)1987

 


 Il Vento (イル・ベント)1989

 


 Angela (アンジェラ) 1990

 


La Goccia  (ラ・ゴッチァ)1992

 


美術館や画廊においては

「手を触れないでください」の注意書きが多いですが、

私が彫刻作品を発表するときは

「どうぞ触って鑑賞してください」と観る方々へ言っています。

先日、5歳児学年の行事の際には、

「園長の石コレクションコーナー」を設けてもらって、

化石や宝石類の鉱物たちと一緒に

イタリアの大理石で作った作品も1点設置しました。

もちろん、子どもたちに触って鑑賞してもらいました。

石彫刻のひんやり感やつるつる感を声に出して感想を言ってくれました。

ごつごつした硬い石がぴかぴかして

手触り良く形に出来ることを感じてもらえたのではないかと思っています。

 


                    

☆おまけ☆

今週の稲の様子


 

先生たちが雑草を抜いたので、

稲の周りがすっきりしました。

 

実際に見ると大きくなっていると感じるのですが、

写真だと伝わりにくいので、

メジャーで測ってみることにしました。

 

コンクリートブロックからすぐ近くの稲の、

一番長い葉を測ります。



83cmでした。

メジャーに黄色い印をつけておくので、

来週はこの印を元に稲の長さを比べてみようと思います。



ちなみに83cmがどのぐらいかというと、

4歳児学年の園庭にあるジャングルジムの

下から2段目ぐらいの大きさです。




夏休み期間中は

毎週5歳児学年が育てている稲の写真を載せていきます。

一週間でどのぐらい成長したか

ぜひ見比べてみてください。